両親からの手紙

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

両親からの手紙

 朝、朝食を終え、二階の部屋で学校へ行く準備をしていると、 「ちょっと~、大事な話があるから、二人とも、早めに身仕度(みじたく)を整えて、和室に来てくれ~!」 「はいよ~!」 「は~い!」    と、父が一階から呼んでいた。  身仕度を整え、僕と妹が和室に入ると、父と母が改まった感じで、(とこ)の間の前に正座をしていた。 「二人とも、そこへ座りなさい」  父に(うなが)され、僕と妹は、何だか重たい空気に顔を見合せながら、両親の前に座った。 「二人とも、登校前の忙しい時間に、すまんな」 「いや、別に、俺たち、まだ時間大丈夫だけど、どうしたの?」 「何か~……、あった?」  僕と妹が(たず)ねると、母はうつむき、左手で口と鼻を(おお)ったかと思うと、突然、泣き出した。 「今日~、お前たちが、学校から帰って来たら……、母さん……、家に居ないから……」 「はっ?!」 「えっ?!」  母は、左手で嗚咽(おえつ)を抑えながら、畳の上に置かれた、改まった感じの手紙を、右手で、静かに、僕と妹の前へ、スーーーッと滑らせた。 「えっ、何、コレ?」  僕が訊ねると、母は泣きながら部屋を飛び出して行った。 「ん~……、父さんもな、お前たちのことを思って、母さんとは充分に、話し合ったつもりなんだ。しかし……、母さんの気持ちを、変えることが出来なかった……。スマンッ!」 「だから、何があったのよ~ッ! お兄ちゃんも私も、意味分かんないじゃん!」 「そろそろ父さんも仕事に行かないと……。お前たちも、学校、遅れるなよ! 詳しくは、Webで! ……じゃなくて、その手紙を読んでくれッ!」 「はっ?!」 「ちょっと、お父さん! お父さんってば~ッ!」  父も多くを語ることなく、家を出て行った。僕と妹は、ただただ意味が分からず、キョトン……、と顔を見合わせた。 「ちょっと、恐いんだけどッ! 一体、何々~、その手紙~ッ? お兄ちゃん開けてよねッ!」 「お……、おう……」  僕は、恐る恐る、両親からの手紙を開けた。  一枚の便箋(びんせん)が入っていた。  母の達筆な字で、何やら、切々と書かれていた。 ****************************  母さん、あなたたちの下校時、留守します。  父さんは、あなたたちも好きなハマチの特売が、あっちのスーパーであるから、あっちのスーパーへ行けって言うの。  だけど、こっちのスーパーだと、今日はタイムセールで、マグロの解体ショーもあって、マグロのいろんな部位が大特価なの!   だから、今日は母さんのワガママ、許してッッッ!!! **************************** 「もう~~~、ほんま、朝からお騒がせな、おっさん・おばはんやで、全く! 俺ら、ハマチもマグロも好っきゃから、どっちゃでも、行って来てくれや~~~ッッッ!!!」 「あ~~~、私、サーモン食べたくなって来ちゃった!」 「ほんまや~! 俺も、以下(イカ)同文……、なんちゃって!」
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!