愛しさ、綴れば

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「あ・・・ああ・・・」 「母さん!母さん!」 「おばあちゃん!」 家族がうち揃って母を囲む臨終・・・ けれども母は誰を見るでもない、 ただ、宙を見る・・・ 母の胸には父からの手紙、 戦地からの最後の手紙。 母はいつも肌身離さず持っていた。 父の戦死の公報も信じてはいなかった。 女一人、田畑を耕し、私を育てた。 長い長い人生・・・孫も曾孫も。 その人生が今、幕を閉じる。 「く、くに・・・邦子ぉ」 「なに?どうしたの?母さん!」 「お父さん、お帰りや・・・  はよ、早ぅ、顔を見て  顔、見て・・・おもらい・・・」 「母さんっ」 それきり母は目を閉じた・・・。
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