浮気について―オレンジタルトをデザートに―

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――浮気している男性は急にマメになったり、優しくなります。  と、ばばんと、その一文が全面に押し出されているネット記事。  『浮気している男性の見分け方』という見出しに興味を惹かれて、ついクリックをしてしまった。     マメなのも、優しいのも昔から。休日出勤に泊りがけの仕事、最長一週間帰って来なかったこともあるぐらい、昔から忙しそうだった。生活費や家賃もいれてくれるが、私も食うに困らないぐらいには収入があるから、拓人が自由に使えるお金も多い方だと思う。そして、拓人の趣味といえばゲームぐらい。ゲームは一度買ってしまえば売ることも出来るし、実はそんなにお金がかからない、コスパのいい趣味だと気づかされたのは、拓人と付き合うようになってからだった。   拓人の友人も、本当に気を許している三人だけしかいないし、私も知っている。その三人と飲むときは、私も必ずついていく。   会社の付き合いで飲みに、なんてのも、忙しい会社だから、新忘年会や歓送迎会ぐらいのものだ。しかも拓人は、面倒だからと一次会で帰ってくるし、休日は私と共にいる。   急に忙しいと言い出したわけでもないし、スマートフォンを肌身離さず持っているのだって、仕事の連絡があるかもしれないからという理由で、それも昔から変わらないことだった。   一個一個、その浮気している男の行動チェックリストに、拓人の行動、性格を当てはめていくと、浮気しやすい男性の傾向に、結構な数の項目が当てはまった。   たかがネット記事。  みんながみんなそうじゃないし、人による。   と、頭ではわかっているはずなのに、どうしても、頭に引っかかった。  そして、その記事の締めの一文に、私は、もっと頭を悩ませることになった。  ――白黒はっきりつければ、もっとあなたは幸せになる!   果たして本当に幸せになれるのか、謎しか生まない一文だった。  浮気を疑い、旦那の全てに疑惑を持ち、問いただしたところで本当に幸せになるのだろうかと、疑問が浮かぶ。   相手が浮気を認めたらどうするというのだ。  別れるの?   別れたくないのに別れたら、それこそ不幸のどん底じゃないか。   ただただ、自己嫌悪と劣等感に襲われるだけで、幸せとは程遠いんじゃないだろうかと、私には思えた。   そして、そういえばと、はたと思った。  旦那が借りているあの部屋に、最近行っていないということに気が付いたのだ。そんなに遠くはないし、前までは、休日に作り置きした食事を持って行ったり、軽く掃除をしに行っていたというのに、だ。   旦那の会社が働き方改革だとかで、帰らない日というのが少なくなったということもある。私がフリーに転身し、意外と昼間、自由に動けなくなったということもある。  「悪いし、いいよ。そんなしょっちゅう行かなくなったし、掃除もちゃんとしてる。飯も食わないからさ。」   けれど、一番の理由は拓人に、そう言われたことだった。   疑いにあふれた今、考えてみれば遠回しに来るなと言っていたのではないかと、どんどん怪しく思えてきた。
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