満月

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そして深夜一時過ぎ。 月明かりに導かれ、俺は独り、大神が泊まるコテージへと車を走らせていた。俺たちが宿泊しているビジネスホテルからは、車で少し離れた山の中にあった。 曲がりくねった山道を月が明るく照らす。もう間もなく満月であることをその明かりが知らせていた。 やがて周囲から完全に隔離されたように木々が生い茂ったコテージが視界に入る。幾つか間隔を開けて建物が並ぶ、その一番高い場所にあるコテージに大神は泊まっていた。 彼が宿泊するコテージの前に車を停めた俺は、車のエンジンを止め外へ出る。10月とはいえ、山奥の夜は芯から震える思いがした。 「そっちが来いって言ったのに、電気すら付いてないってどういうことだよ」 吐き捨てる様に呟いたが、内心、一筋の光も灯らず、木々のそよぐ音しか聞こえないこの状況に、心細さと不安を酷く感じていた。 コンコン、控え目にノックをする。腕時計に視線を落とすと、時刻は約束の五分前であった。 中から返事は無い。 寝てしまったのであろうか。 そう思った俺は、もう一度、今度はいつも教授室をノックするように叩いた。 それでもやはり返事は無い。 暫くドアの前で待機していたが、満月になる時刻を迎えた俺はダメ元でドアノブを回した。 「あ、開いた……。物騒だな」 そう呟きながら俺は恐る恐る真っ暗な部屋の中へと足を踏み入れる。寝室とリビングキッチンが別の作りとなっているこのコテージは、中へ入ると思っていたよりも広々としていた。 まず手前のドアを開ける。 「……バスルームか」 次いでその奥のドアを開ける。 「リビングキッチンか……」 入ってすぐの暖炉があるリビングはひんやりしており、大神の気配はなかった。 「室内だというのに、寒いな」 リビングと繋がっている小さなカウンターキッチンへ向かうと、更にその奥にドアがあり少しだけ開いていることに気が付いた。 導かれるようにそのドアへと近付き、中を覗いた。 不思議なもので、そこ(、、)に大神が居るに違いない。そう確信したのであった。
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