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部屋の中はカーテンが大きく揺れ、窓や勝手口が開け放たれていた。
「物騒だな」
室内の様子をこっそり窺っていた俺は思わずそう口走る。
だがこの室内のどこを見渡しても大神の姿は見えない。
おかしい……。
コテージをもしかして間違えたのか。
否、そんなはずはない。
手配は、俺がしたんだ。
すると遥か遠く、獣の遠吠えが聞こえてきた。
「えっ?野生のオオカミ?!……でも、日本では絶滅しているはず……」
慌てて俺は開け放たれていた勝手口から声のする方へと飛び出して行く。
また遠吠えが聞こえる。
月明かりを辿りながら遠吠えが聞こえる方へ暗闇の中、俺は必死で走った。
日本では絶滅したとされているオオカミが山奥で生きていたとしたら、これは世紀の発見だ!
研究者としての血が騒いだ俺は、遠吠えが聞こえるすぐ傍まで近寄ると月明かりの下、少し大きな獣のシルエットが浮かび上がっているのを確認した。
間違いなくオオカミだ!!
興奮に満ち溢れた俺は、我を忘れ丸腰のまま獣へ近付こうとする。
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