184人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうして……こんな……」
強い力に押さえ付けられ抵抗できない俺は、獣に感じやすいところを攻め立てられよがってしまう。
「新高クン、私がどうしてこの研究をしているのか……特別に教えてあげよう」
漆黒の獣は尾を激しく振りながら、四つん這いの獣から人型へと変わっていく。
「!!」
「狼男の伝説は聞いたことがあるか?私はこの地で唯一生き残った、“狼憑き”と呼ばれる男だ。人間でも狼でもない、呪いをかけられた半端者としてこの世に性を受けたんだ。不気味なくらい年を取らない美貌もそのせいだ。忌々しい呪いを解くために、私はこの研究を始めたのだよ」
哀しそうな声色で告げる大神に、彼の苦悩を悟ってしまう。
「だが満月だけは別だ。あの月を見ると、狼になってしまうんだ。伝説だと噛み付かれた人間も同じ狼男になると言われている。キミをお仕置きと称して、仲間に引き入れようとここへ呼び出したが……やはり、同じような半端者をこの世に生み出す訳にはいかない。だから……」
悔しそうに呟く大神のその声に、俺は胸を打たれてしまう。
大神の顔をがっしりと掴むと、俺は自身の首筋へと導く。
「俺はまだまだ経験が浅いですが、研究者です。しかも、大神教授のポスドクです。あなたの研究が成功するまで傍にいる覚悟はできています。だから、その研究……最後まで俺もメンバーでいさせて下さい!!」
「新高クン、キミ……」
驚愕した表情で大神は俺を見つめる。
最初のコメントを投稿しよう!