冬空

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ガチャリ。706号室の扉が大きく開く音がした。その音に息を飲む鈴見。 二つの足音が廊下を超え、鈴見達のいるベランダに近づいてくる。 「片づけは進んでいるか?」 「この近くにね、おいしい中華料理のお店があったのよ、それでこれはお土産ね」 テーブルに持ち帰った、チャーハンと餃子それとライスとチャーシューを次々に並べていく。 「あ、ありがとう・・」 二人の顔をまともに見ることができない鈴見は目が右往左往しながら天井に視線を向けている。 「どうした、なにかあったか?」速雄の問いに焦りながら、ベランダを何度もチラ見してしまう。 「ベランダがどうかしたの」覗き込んでくる芙美を慌てて止めるも、横から速雄が覗き込む。 綺麗に大穴の開いたパーテーションの前に怜が困った顔押して立っていた。 「いや、これには訳がありまして」 「何やってるんだ!」激怒する速雄。 「ふふ」笑ってしまう芙美。 「お前ってやつは、これはお前が金を出して弁償しろ」 正座して「はい」としか言えない鈴見。 「ごめんなさいね、こんな子じゃないんだけど、どうしてこうなるのかしら。怪我がなくてよかった」 「ははは」苦笑いの鈴見。 スマフォに文章を打ち込む怜。 「気にしないでください」 「お腹空いてない?お詫びにさっき買ってきたものだけど、食べない?」 意外な反応に戸惑い下を見る怜。 正座したまま「俺の分は、ありますでしょうか?」申し訳なさそうな声で尋ねる。 「ない」冷たく言い放つ速雄。 「いいじゃない、半分にすれば、あんたも正座してないで、食べる準備なさい」 「はい」食器を取り出し、テーブルに置く鈴見。少し冷えたお土産たちを電子レンジで温めなおし、怜の分を取り分けて皿に盛りつける。 椅子に座り、準備が整うのを黙って待つ怜。 「二人を見ていると、なんだか、妹が・・・」口ごもる芙美。 「娘ができたみたいね」速雄に問いかける。 「・・・そうだな」少し不愛想に答える速雄。
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