第1章 食いしん坊の神様 ①

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『戻ったか』  暗がりから、白くぼんやりとした人影がゆっくりと近づいて来る。  私は手探りで明かりを点けて家に上がり、その声に返答した。 『ただいま。神様』  先程も触れた通り、私は(まぎ)れもなく一人暮らしである。  ただし、()()()()()()はいないという意味でだ。  つまり、何を隠そう私の同居人は神様なのである。(にわか)には信じ難いと思うが、この物件には、庭付きの土地家屋、家財道具一式に、神様まで()いてきた、昨今の通販番組を震撼させる超バリューセットであったのだ。
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