第1章 食いしん坊の神様 ①

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『今日は遅くなってしまったので、コンビニのおにぎりとサラダですよ』  手を洗ってから座敷に腰を降ろすと、私はこれまた古びた卓袱台(ちゃぶだい)に先程コンビニで買って来た夕飯を広げた。  神様も私の向かいに腰を降ろすと、期待の込もった表情で私の「お供え」を待った。 『ツナマヨか?』  以前、やはり帰りが遅くなった際に買って帰ったツナマヨネーズのおにぎりを、神様は大層気に入っていた。 『ええ、あと焼きたらこです。サラダは蒸し鶏と水菜に大根のサラダです』  順番に包みから解いて、おにぎりは白い皿にのせ、それぞれ神様の前に並べる。 『相変わらず食が細いな、沢山食べねば大きくならんぞ?』 『この歳では、どうせ横にしか大きくなりませんからね。では、いただきます』  私は(うやうや)しく手を合わせ、頭を下げた。  まだ神様との暮らしが始まったばかりの頃、神様に食事を捧げる儀式には、何か決まったやり方があるのかと、訊ねた事があった。その時は、 『いいよ、いいよ、私に捧げようって気持ちさえあれば。なんかそれっぽい感じで、適当に頼むよ』  という、大層いいかげんな回答を頂戴したので、一応しっかり手を合わせて一礼してから食べ始める習慣にしていた。
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