第1章 食いしん坊の神様 ①

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 それを見届けると、神様は嬉しそうにツナマヨおにぎりに手を伸ばす。  蛍光灯の明かりに照らされて光る、パリパリの海苔。神様がそれをつかんで持ち上げると、皿の上のおにぎりから、「向こう側の透けた、半透明のおにぎりの幽霊」のようなものが引っ張り出された。  神様はそれをさも旨そうに頬張りながら、 『ツナマヨ好きじゃ~』 と、幸せそうな顔をする。  神様は普段から実に色々なものを食べるのであるが、実際に()()()()()()は消費しない。  神様が食べ物を手に取ると、その食べ物から透き通ったもう一つの食べ物が、まるで幽体離脱でもするかのように現れ出る。  無論、本当に幽体離脱なんて見た事は無いので、あくまでもイメージであるが。  神様の口に運ばれるのは、その半透明の幽霊の方であり、物体としての食べ物はそのまま皿の上に残っている。  だから、用意する食事はいつも私の分だけで良かった。
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