第1章 食いしん坊の神様 ①

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 私はペットボトルのお茶を湯のみに注いで神様の前に差し出す。飲み物だけは、なんとなく別々に用意する事が多かった。  一緒でも別段問題はないのだが、同時に湯飲みに手を伸ばすとちょっと気まずいし、なんだか落ち着かないのだ。  私も一口お茶を飲んで、皿からおにぎりを取り上げて頬張る。幽霊の抜け出た食べ物は、別に味が薄くなったり、量が減ったりする訳ではないが、少しひっそりとした印象になる。恐らく気のせいだと思うが。  もう一口齧る。コンビニのおにぎりは、海苔がパリパリしているのが良い。しっとりしたタイプも美味しいが、このパリパリした食感は他ではあまり味わえないので心地よかった。  二口目で具のツナマヨに到達した。始めてこれに出会った時は、おにぎりの具材としては、いささか邪道に感じたものだが、今ではすっかり大定番と言うのだから、侮れない存在である。自分もかなり好きな具の一つだ。 (やっぱり日本人はマグロが好きなのかなぁ……)  と、食べながら、ついどうでもいい事を考えてしまう。  おにぎりの具の事よりも、もっと直視しなければならない不可解な現実が目の前にあるのだが。
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