第1章 食いしん坊の神様 ①

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 古今東西、日本に八百万(やおろず)の神ありといえども、食いしん坊の神様というのは、そう居ないような気がする。  豊穣の神など、人間たちに恵みを与えてくださる神様は多様にいらっしゃるが、こちらの神様は呆れるほど食べる側に専念していた。  それも、米や果物など自然のままの供物(くもつ)より、人がこしらえた料理や菓子を大変に喜ぶのだ。  昔から食べ物の美味しそうな匂いに誘われては(やしろ)を抜け出し、人里に降りては、つまみ食いを繰り返していたなんて、まるで神様らしくない。  そんな神様が、どうしてか私のような貧乏教師の家に居憑(いつ)いていたりする。
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