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ビニール袋をぶら下げて店を出ると、再び暗闇の世界に取り込まれた。
そこからさらに緩やかな坂を登り終えると、ようやく我が家が見えてくる。
台風でもやってくれば、一息に朽ち果ててしまいそうなこの古い日本家屋には、元々私の叔父が住んでいた。
『木造家屋は空き家にすると傷みが早いからなぁ……』
一年前の冬に叔父が亡くなった際、葬式はこの家で行われた。叔父は生涯独り身であったため、妻子はおらず、お世話になった近隣の住民がわずかに参列するだけの小さなお葬式だった。
葬儀の後、私は父に呼ばれてある相談を受けていた。
『夏也、家賃は要らないから、引き取り手が見つかるまで、この家に住んでくれないか?』
この家は、父が子どもの頃に暮らした実家でもあったが、現在うちの家族は東京に住んでおり、父もまだ田舎に引っ込む気は無かったのだ。
そこで、勤務先の都合で丁度五月からこの町に暮らす事が決まっていた私に、話が巡って来たという訳である。
作家を志して、中学校教師をしながら細々と生活している私にとってはまたとない話であり、二つ返事で承諾した。
あれからもう一年経つが、恐らく新たな引き取り手など本気で捜してはいないのだろう。いずれにせよ、給料も決して多くない自分にとって家賃がかからない事は、大変有り難かった。
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