手紙は海を越えて

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「あー、中学卒業したら、あたし上阪しようかなぁ」  まるで脈絡もなく、しかしどこかわざとらしく、ユズはそんなことを呟いた。 「マジかよ!? 高校どうすん?」 「だ、か、らぁ、大阪の高校に行くんよ。そのほうが将来も安泰じゃろ?」  十四歳の中学二年生の口から、将来安泰だとか世知辛いものだが、それもしょうがない。この田舎では働く場所はそう多くない。 「なぁ、アキもいっしょに来ん?」  恐る恐るという感じで、ユズは訊いてきた。 「まあ……仕事はそうかもしれんけど、大阪はなぁ。あっちもそのうちヤツらに侵略されるで……」  華やかさと危険性を天秤にかける。僕としては、田舎でも命の危険のないこの町のほうがいい。 「そんなことゆうとってもしょうがないで。大丈夫、大丈夫。その時は逃げりゃええんよ」  ユズはからからと笑った。たくましいものだ。本当にヤツらに狙われたなら、逃げるなんて生身の人間には無理に決まっているのに。
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