手紙は海を越えて

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 ヤツらは――機械なのだ。しかも人間の知能を遥かに凌駕する人工知能。社会科の先生からそう聞いた。  歴史の教科書では、ヤツらが人類の知能――シンギュラリティに到達したのは西暦二〇四五年となっている。それから六十年近くが過ぎた今、世界の都市のおよそ半分は、人工知能が治める領土となっていた。  ただ、そもそもその原因を作ったのは人間だ。  行きすぎた経済制裁などが発端となり、第三次世界対戦が勃発したのが、古くは西暦二〇三六年のこと。それは人間なき戦争ともいわれ、実質戦い合ったのは、人工知能を搭載した兵器どうしだった。機械は放射能すらものともしない。ゆえに核兵器までもが安易に行使された。  並行して、自らの意志を持つ人工知能が現れ始める。そして日本も姿を変えていった。  当時の首都東京を中心に、関東、中部、甲信越のほとんどが今もなお放射能に汚染されている。  首都は大阪に移された。そして汚染された地域は、現在人工知能によって統治される侵入不可能なエリアと化している。  よって日本国民が住むことができるのは、関西、中国、四国、九州、そして東北と北海道だ。  沖縄は核により消滅した。そして東北と北海道は、人工知能が支配するエリアによって、西側から完全に切り離されてしまったために、今そこがどうなっているのか、僕たちには想像すらできない――。
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