問題を抱えて歩く人へ

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問題を抱えて歩く人へ

新たに伸びる道はゆらゆらと、 果てしなく遠い先まで続いている。 曲がり、歪んで、揺らめいて、 不安で、怖い、黒い雲をつかむよう。 背中に伸びる道はボロボロと、 今にも崩れそうな頼りない小道。 いつか見た風景に胸が熱くなる。 左に輝かしい華が咲き、右に人の形の闇が浮かぶ。 遠い先の丘のむこうに夢を見たのは昔のこと。 歩けば歩くほど物語は進んでいく。 もがけばもがくほど主人公は強く、優しくなれる。 そうして歩いた道の先には何があるのか、 希望と不安が同時に脈打つ。 後ろの道には触れてはいけない。 あれはもう過ぎたことだから。 思い起こした過去は重荷でもなければ、 自分の一部にも組み込まれてはいない。 過去がもつ意味は自分で決めてしまえばいい。 さぁ、歩こう。 道は一つ。 後ろを振り向く必要はない。 歩き方は自由だ。 疲れたらいつでも休むといい。 歩きたくなければ座ればいい。寝転べばいい。 寄り道もしてもいい。道草を食べてもいい。 さぁ、歩こう。 目前に広がる闇に目を凝らし、 道半ば、たどり着かない不安と共に。 しかし、出会ってくれた人が、言葉が、 そっと背中を押してくれる。 大丈夫。 まずは一歩を踏み出さなければ体は前に進まない。 さあ、歩こう。 遠い先の光でもなく、 通り過ぎた華と暗闇の喧騒でもなく。 今、ここに立つ命の目印。 作り上げてきた強き灯火。 その周りにはたくさんの感情。愛。夢。希望。怒り。悲しみ。憎しみ。嫉妬。絶望。 この混沌とした世界でどう生き、何を楽しむのか。 さあ、歩こう。 人生は楽しむためにある。 喧嘩してもいい。失敗してもいい。傷つき、傷つけてもいい。怠けてもいい。泣いてもいい。諦めてもいい。絶望してもいい。 問題を抱えて生きるあの人は、それを箱の中に押し込めて、思い切り笑ってやった。 問題を抱えて歩くあの人は、時々つまずいて、転んで、ケガをして、シクシク泣いて、もう歩きたくなくなる。 それでも心は楽しみたいから、 楽しいことを探すためにまた立ち上がる。 幸せになるために。 さあ、歩こう。
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