昼飯

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昼飯

会社の近くのローソンに行く。12時8分。昼休憩だ。1人暮らしのツヨシは大体昼飯をここで買う。いつも同じものを買って出る。こだわりがない。だけどまちカフェのアイスコーヒーは欠かさない。ヨシカワはおいしいコーヒーを淹れてくれるがいつもホットだからだ。ほとんど外食をする社員の中で、ツヨシの様にデスクで昼飯を食べるのはヨシカワだ。ヨシカワは手作り弁当を持って来ている。体型のわりに小さな弁当箱。ツヨシはなんとなく見てしまう。弁当の中身に卵焼きが2切れ入っていた。ヨシカワはまずその1切れを食べ白米を口に運んだ。ツヨシは自分も弁当を食べながらそっと様子を見ている。「温めますか?」から「温めますよね?」にかわる程ローソンの店員との仲になっていたツヨシ。その弁当と比べ、ヨシカワの弁当は冷たいのだろう。だけど少し焦げた卵焼きはおいしそうで、いつになったらもう1切れを食べるのかとツヨシはずっと見ていた。だけどヨシカワは手をつけない。ツヨシは食べ終わり、十六茶を飲み始めた。残りの白米を噛みしめる様に食べて、最後に卵焼きを食べるヨシカワ。最初とは逆だな、とツヨシは思った。ツヨシ同様、十六茶を飲んでいる。お茶くらいは贅沢したいのかな…とツヨシが思った時。 「ガッキー好きですか?」 不意打ちだった。 「え?あ、まあ、フツー」 ヨシカワは微笑んだ。ガッキーは十六茶のCMガールだ。そしてツヨシは気付いた。同じ十六茶でもヨシカワのはトクホのものだった。太っていることを気にしているのだろうか。新垣結衣はモデル出身だ。 「カワイイですよね。スタイルもいいし」 「そうだね」 やはりそうなのだろうか。ヨシカワは痩せて、きちんとメイクをすれば、新垣結衣とまではいわなくても、そこそこなのではないか。…だけど、ポッチャリしているのがヨシカワの魅力なのかもしれない、とも思った。ツヨシは、小さな声で「よろしくお願いします」と言うヨシカワとの初対面の時から、ヨシカワに好印象を抱いていた。
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