第六章 明かされた真実

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「知っていますか? 肉体に宿った穢れは死を以て精算され()ちますが、その精算先が魂だと」 『死を迎えると共に、お前が言ったように穢れた身体の記憶が全て魂に移行される。悪人は悪人の魂になるということだ。天国行きと地獄行きはそこで決定付けられる』 壱吾君の病室で天地さんはそう言った。 「その顔は……なるほど、天地蒼穹に聞いたのですね?」 天地さん? なぜ彼の口からその名前が? 侮蔑の色に染まるゼロの顔を見つめる。すると、彼の口から低く呟くような声が聞こえた。 「奴は何も覚えていないくせに、今世でもまた僕の気持ちを逆撫でする」 覚えていない? 今世もまた? ――もしや天地さんとゼロは前世で顔見知りだったということだろうか? 好奇心がムクムク顔を出す。 「天地さんのことご存じなんですか?」 気付けば堪らず訊いていた。 「ああ、よおくね。今世でようやくトーコを見つけたと思ったら、奴も現われた。目障りなのに常に視界に入ってくる。本当に嫌な奴だ」 「あっ……」と、因幡さんの話がフラッシュバックする。 『――彼はとある理由で身も心もボロボロになっちゃったの』 カチッとピースがはまる音が聞こえた。 天地さんの頭に十円ハゲが二つもできた理由――それは、そのトーコという人を失ったからだ。 「天地さんは貴方のこと……」 「知っているけど知りません」 彼の返事に無数のハテナマークが浮かんでは消える。本当に意味不明だ。 「今世の彼、天地蒼穹は僕が前世から続く因縁の相手とは知らないということです」 「因縁って……?」 「トーコを教祖にしたのは天地蒼穹です。但し、前世で、ですがね」 「はぁ?」 驚愕するに値する事実だった。
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