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「お願いだから病院に行ってちょうだい」
結局、祖母に懇願されて渋々病院へ行ったのは、退院してひと月ほど経ってからだ。そこで下された診断は、PTSDによる摂食障害だった。
現在、拒食の症状は緩和され、ひと頃は命に支障をきたすほど落ちた体重も、痩せ気味とはいえ回復した。しかし、PTSDそのものが完治したわけではない。
――何を忘れてしまったのだろう?
フラッシュバックのように、何かの拍子に噴き出す疑問。
忘れてしまったことは忘れてしまおう。そう思うのにそれができない。考えずにいられないのだ。なのに、抜け落ちた記憶は頑丈な金庫にでも仕舞われてしまったように、何をどうしようと取り戻すことができない。
記憶の欠如も事故の後遺症だが、これも一種のPTSDらしい。
こんな風に、私は多くの欠陥を持つ不完全な人間だ。これが自分に対する評価だった。それが私を頑なにさせた。
祖父も祖母も、そんな風に固く心を閉ざす私を、どうにかして昔の私に戻したかったのだろう。祖父は武道を教えることで、祖母は食卓を手作りの料理でいっぱいにすることで、私を明るい方へと導く努力をしてくれた。
心の在り方は未だ修正できていないけど……。
しかし、武道を修練したお陰で聴覚と臭覚、それに第六感が鍛えられた。それは、暗闇で生きていた私になくてはならない感覚だった。
そして――十三歳の誕生日、運命はまた変化した。
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