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とにかく、世津子の『鴉の血筋』に対する思い入れとプライドは、並大抵ではないのだ。
それを、得体の知れない金髪ピンクスーツおばさんに一笑され、黙っていられようか(反語)。
「あ、あなたこそ、上から下までピンク色で、まるでフラミンゴじゃないの!」
「可愛いじゃないか、フラミンゴ。ピンクレディも歌ってるし。『フラミンゴみたい、ちょいと一本足で~♪』」
フラつきながら片足でツイストを踊る洋子の姿に、世津子の頭頂部から爆発寸前の火山のように湯気が立ち始めたその時。
「あの~……お取り込み中、すんません」
鴨居を潜りながら姿を現したノッポの浴衣男に、世津子は顔をひきつらせたまま、「ヒィッ」と小さく悲鳴を上げた。
「この人、誰!?」
「アタシの婚約者だよ」
「あ、俺っすか。ジョージっす」
赤い頬に黒装束の世津子と金髪ピンクスーツの洋子の隙間に、浴衣姿のジョージが顔を挟みながら答える。
「どんなコントラストだよ」
心の声が駄々漏れしようが、構うものか。
つい数時間前までは、母と娘の二人で静かに暮らしていた海辺のわが家に、癖の強い大人が三人押し寄せてきた。
歯噛みをしたくなる状況を憂えていた真帆は、玄関にいたはずの渚が消えていることに気づいた。
「あれ……渚は!?」
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