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奇人三人に気をとられ、うっかり渚から目を離してしまった。
「ナギちゃん、どこ? 渚!」
もしや、一人で浜辺へ行ってしまったのだろうか。
サンダルを引っかけ、駆け出そうとした真帆の腕をジョージが捕らえる。奇しくも、撮影を咎められた時とは真逆の格好になった。
「何よ、離してよ。早く追いかけないと、見失っちゃう! あの子は普通の子じゃないのよ!?」
「あの~、取り乱してるところ申し訳ないんですけど……部屋にいますよ」
「え?」
「渚ちゃん、和室で遊んでますよ。お絵かきして……」
「早く言いなさいよ!」
のんびりとしたジョージの口調は、どちらかといえばせっかちな性分の真帆を余計に苛立たせる。
玄関廊下に立つ洋子と世津子の二婆を分け入り和室を覗くと、渚は畳に広げた模造紙の上で、熱心にペンを動かしていた。
「ナギ……」
声をかけようとした真帆は、静かに息を飲む。渚が描いていたのは、お花でも蝶々でもなく……。
寸分の狂いなくパズルの形をなぞったような、精密な世界地図だった。
「真帆さんにだけ、こっそり教えようと思ったんす。あの人に知られちゃ、まずいかなと思って……」
ジョージの言う『あの人』とは、誰を指しているのか、すぐにピンときたのだけれど。
「これ、渚ちゃんが描いたの!?」
時すでに遅し。
黒いカラス・世津子は勝手に部屋へ上がりこむと、真帆の背後から甲高い歓声を上げた。
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