白い男とピンクの女と黒いカラス

16/18
前へ
/69ページ
次へ
* 「で、追い出されてここへ戻ってきたわけ?」 「私から出ていったのよ。渚を連れて……っていうか、心の声が漏れてた? どの辺りから?」 「『非凡な孫娘を』からっす」  ジョージに指摘され、改めてダメ出しを食らった気持ちになる。 ━━欲しいのは、非凡な孫娘。平凡な嫁は、必要ない。 「さっきから聞いてりゃ、アンタの夫はどうしてんの? 一切、話に出てこないじゃないか。カラスって女の息子なんだろ?」  鋭く核心を突く洋子に、真帆は他人ごとのように素っ気なく答えた。 「子どもに興味のない人だったから」  渚の父親……つまり真帆の元夫は、簡単に離婚届けに判を押し、あっさりと慰謝料まで手渡してくれた。そのお陰で、この海辺の家を買い戻すことができたのだ。今となっては、彼がどんな人となりだったか思い出せない自分も、たいがい冷たい人間なのではないかと思う。 「まあ、分からなくもないよ。アタシも子供は苦手だし」  実の娘を目の前に、よくもそんなことをと呆れつつ、洋子らしい発言に真帆は小さく笑った。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加