白い男とピンクの女と黒いカラス

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 無造作に置かれた半畳サイズの世界地図は、確かに六つの子が十分で作成したとは信じがたい精密さだった。 「すげ~。写メっていい?」 『写メ』の意味も分からず、パズルの完成に気を良くしている渚は「いいよ~」と返す。「〇〇していい?」と聞かれ、「いいよ」と答えてしまうのも回答パターンだ。 「ちょっと、何してんの?」  スマートフォンのカメラ機能を立ち上げ、渚に近づくジョージの腕を真帆は万引きGメンのごとき素早さで捕らえ、撮影を阻止した。 「個人情報保護法! SNSアップ厳禁! 勝手なことしないで!!」 「そんなことしませんってば……。すげぇキレイにできてるから、地図だけ撮りたかったんすよ。すんません」  その激高ぶりにたじろぎながら、ジョージは精一杯の言い訳と共に、深く頭を下げた。 「あんた、何イライラしてんの? カルシウム足りてる?」 「かるしうむ、たりてる~?」  洋子が口をはさむ(かたわら)らで、やはり渚も繰り返す。  戸棚から煮干しの入った袋を取り出し、ポリポリと咀嚼した後に冷静さを取り戻した真帆は、うなだれるジョージと呑気に茶をすする洋子に言い聞かせた。 「世の中には、良からぬことに子どもを利用しようとする輩がいるのよ」 ━━ピンポーン!  真帆が言い終えるのを待っていたかのようなタイミングで、玄関チャイムが鳴った。
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