一章 現実

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一章 現実

a36e1666-5033-4287-922d-8686be69f332 郵便受けに音がした? こんな家に誰が郵便を出すのだろう? 俺は寝っ転がりながらスマホを見た。 興味のある動画はもうだいたい見た。 ガスは止まっているし、電気もそろそろ止まる。 昔は蝋燭一本で過ごしたのだろうが、今はスマホ一つで過ごす。 娯楽はスマホがあれば十分。 しかし、底辺だ……。 俺はまたスマホを覗いた。 先日不祥事を起こした人が特別な待遇を取られたらしい。 つまり、不起訴になるんじゃないかってことだ。 上まで登れば何でも許される。 ……上級国民。 上まで登らなければ何も許されない。 ……下級国民。 俺は水道の蛇口を捻った。 水が流れる。 俺は水の流れを口で受けた。 腹の中に水が溜まる。 食料もそろそろ限界だ。 水で腹を満たすのもそろそろ限界。 俺はまた床に寝っ転がった。 仕事はしばらく見つからない。 そして、この状況から抜け出す方法もしばらく見つからない。 俺はどこで踏み間違えたのだろう? スマホを手放した。 外で自動車の排気音が聞こえる。 そして、隣の家のカレーの匂いがする。 俺はさっき郵便受けに何かが入れられたのを思い出した。 どうせダイレクトメールだろう。 もしくは、ガス代の請求書か? 俺は郵便受けを見る気にならなかった。 郵便受けよりも、腹だ。 腹の足しになるものが無けりゃ、もう何日も生き延びられない。 だけど……。 俺が出したのを覚えていない懸賞結果でも届いていれば……。 俺は思い直して、起き上がった。
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