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「要、怒ってんのか?」
「……怒ってねぇよ」
「怒ってんじゃん! 悪かったよ、朝ほっといて行っちまって……でも俺、大事な用事が」
「知ってる」
「はい?」
知ってる。
要は低く落ち着いた声でもう一度俺にそう言った。知ってる? 知ってるって俺が高橋さんにラブレター渡したことを?
な、なんだ……やっぱりイケメンはラブに関することならなんでもお見通しなんだな! さっさと相談しとけばよかった!
「そ、そうなんだよ……俺やっぱり諦められなくてさ。怖かったけど……勇気出してみた」
ガッタン!!
突然要は後ろに仰け反り大量の汗をかき出した。
おい誰か今すぐ他の生徒の目を潰せ! 人としての尊厳が軽く失われるレベルに酷い顔してるんですけど!
「だ、大丈夫か? 要 」
「おっおまっおまっ……」
「え?」
「お前……あれ、本気なのか? 入れ間違いとかイタズラとか、そんなんじゃなく」
「そんなわけねぇじゃん! いくら要でも言っていい事と悪い事があるぞ。あれは俺の本気だ! 俺の気持ちの全てだ! ぶっちゃけあんなこともこんなこともしたいくらい俺は、
愛してるんだよ!!」
ッスーーーン
そんな文字が要の頭上に掲げられたような気がした。全生命レベルが著しく低下している。とりあえず、文字通り要は真っ白になっていた。
「か、要……? 大丈夫か? 悪かったよずっと黙ってて。でもいつかは言おうと思ってた。正直今不安でさ。上手くいってもこの後どうやって付き合っていくか考えただけでもう下腹がヒクヒクすっ」
「帰る」
「え?」
「今日は帰る。お前が本気なら、俺も今後について本気で考えたい」
「マジで? 俺のために? そこまでしてくれんのか?! ありがとう要! 俺、放課後校舎裏で待ってるから!」
学校そっちのけでこんなにも俺のことを考えてくれる親友、他にはいねぇよ。要が告白の返事の場に居てくれれば百人力だ! 植込みの陰からにしてもらうけどな。
要はリュックを背負い直すと、入ってきた担任の横を堂々とすり抜けて早退していった。担任が声をかけてたけど、
「今人生の岐路に立ってんだよ! 邪魔すんな!!」
と、まるで自分のことのように叫んでいた。鼓膜が震える。泣かすぜアイツ……要が親友で本当によかった。
とりあえず放課後まで愛してるの5段活用でも考えとこっと。
もう膀胱は既に通常運転を再開していた。
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