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「ファーーーーー!!」
叫ばなきゃやってられっか!!
階段を一心不乱に登り自室に入る。ゲージをこじ開け愛ハム、「ハム次郎」の腹に鼻を押し当てた。
臭愛しい。前髪をハムハムされているが気にするものか。ハム次郎に食いちぎられるなら本望だ。
とりあえず落ち着け、俺。考えろ。考えるんだ。現状を整理しろ。
とにかくあの恋文は間違いなく俺に対するものだった。直で言って来なかったのは優の優しさだ。俺が戸惑うの分かってたから。
じゃあ、俺はどうなんだ?
多種多様な生き方が尊重される時代。別に俺だって偏見は持っちゃいない。好きならそれが男だろうが女だろうが、小動物だろうがUMAだろうが構わないと思ってる。
だけど俺は多分……
女が好きだ。
いや好きになったことはないが、先日ネットで買い極秘輸送してもらったDVDはかなりのクリーンヒットだった。重宝している。
だからきっとやっぱり俺は女が好きなんだ。いくら優が優男で小動物みたいなやつだったとしても……
あ? 小動物……?
「ハッ」
俺はハム次郎をゲージに戻し、部屋のカーペットをめくった。隠していたDVDは変わらずそこに鎮座している。
ああ、なんてこった。
持つ手が震える。
「集まれ♡小動物女子……ハムハムタイム……」
嘘だろ!!
俺の潜在意識が無意識に優を求めてたってことか?! マジか! なんてこった!!
「俺が……優を、好き?」
そんなはずはない。いや、優のことは嫌いじゃないけれど、そういう、優が言ってたようなあんなことやこんなことをしたいの好きじゃない。
…………はず。はずだ。
でも俺が断れば?
優はもう二度と俺の友達には戻らないだろう。恋が終わればそうなるのが自然の摂理。それは嫌だ。なんだかんだでもう13年も一緒で、家族みたいなもんなのに……
「どうしたらいいんだよ……あんなことやこんなことって……ハードル高すぎるだろ……」
女ですら相手にしたことないのに。
初めての相手が男だなんて、どんなトリッキーだよ。息子も混乱するわ。
どうしよう、どうしたら……
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