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   渚はいつでも取るに足らない生徒だった。成績も大したものではなかったし、運動ができるわけでもなければ、何か部活に所属しているわけでもなく、容姿もスタイルも平々凡々としたもので、これといった特徴がなかった。渚は自分の存在が、クラスという一つの社会の中で、どれだけ弱いものであるかを知っていた。    その一方で、佐紀は例の劇画絵と持ち前の明るさとで、クラスの中で一定の地位を築いていた。二学期からは、学級委員もやり始めた。    渚は佐紀が羨ましかった。自分もいつか人気の出る小説を書いて、みんなに褒め称えられたり、一目置かれたりしたかった。    渚は次回作の構想について、昼夜問わず思いを巡らせた。しかし考えれば考えるほど、わからなくなった。一体何が受け入れられて、何が受け入れられないのか。みんなは何を求めているのか、そして、私は何を書きたいと思っているのか。答えは深い闇の中にあって、焦れば焦るほどに、見えなくなってしまうのだった。  
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