月のまほう

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何が起きたのか分かんなかった。 おれのヨウくんは、どこへ行ってしまったの? おれはどうすればいいの? 何も出来なくて、ただ待ってるしか出来なくて。 夜……カーテンが開いたままの窓から空を見上げたら、お月さまが笑ってたよ。 今日は、まんまるじゃないね、お月さま。 お月さま ヨウくんはどこへいったの? きらきらしんしん光がふってる お月さま お月さま ヨウくんにあいたい まんまるじゃなかったら、まほうはできないの? なんで笑ってるの? おれは窓のそばの畳に座り込んで、半分よりちょこっとだけふくらんだお月さまを見上げてた。 急にかなしくなった。 もうヨウくんに会えないかもしれない。 壁にもたれ掛って俯いたら、ぽたって涙が落ちた。 お月さま お月さまはずっとずっと高いところにいるんでしょ? ヨウくんは見える? ヨウくんはどうしてるの? おとうさんに会えたのかな ひとりだったらかわいそうだよ あの子は、とってもがまん強いから きっとさびしいって泣けない お月さま あなたのまほうで、ヨウくんがさびしくないようにして えらい子です とてもやさしい子です おなかがすいたな くさを取りにいっても、食べてくれる人がいなくなっちゃった お月さま まん丸になったら、まほうお願いします おれ……待ってるね ここで、待ってるね…… ふわふわふわふわ揺れてる感じがして目が覚めた。 うす暗いオリの中にいた。 狭くて、知らない匂いがして、ふと見たら自分の手足が毛むくじゃらで。 おれは猫に戻ってた。 まほうは終わっちゃった。 ヨウくんはいない。 悲しくて、寂しくて、胸が切りつけられたように痛かったけど……元に戻っただけなんだって思った。 もしかしたらヨウくんも、お月さまのまほうで出てきたのかも。 そうだったらいいな。 そうだったら寂しくないよね、おとうさんも、ヨウくんも。 ニャァアアアン…… ヨウくん、ってもう言えない 「さぁ猫ちゃん。着きましたよ~」 女の人の声がして、目を開けた。 ぴくんって……耳が動いた。 遠くで聞こえた声、近づいてくるあの足音…… 「にゃーくん!!」 揺れるオリの向こうに現れた顔は…… お月さま。 すごいね。 まん丸じゃなくてもまほう、出来るんだね。 夜……新しいおうちでヨウくんとお空を見上げたら、昨日よりもちょっとふくらんだお月さまがしゃらしゃらしゃらしゃら笑ってた。 End
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