月のまほう

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月のまほう

おれは黒猫。 おとうさんも、おかあさんもいない。 気付いたらひとりだった。 自分が何さいなのかもわからない。 兄弟もいない。 でも寂しくないの。 ヨウくんに拾われたから。 おまえガリガリだなって……美味しいミルクをくれてね、それはヨウくんのだったの。 ヨウくんのおうちは貧乏で、ごはんもちゃんと食べられるわけじゃないって後で分かって、おれはじーんとしてね、この子の役に立ちたいってすっごい思ったの。 でもね、猫ってなんにも出来ない。 ヨウくんの宿題も手伝えないし、キャッチボールの相手も出来ないし、お話し相手にすらなれなくてさ。 でもヨウくんはね、 かわいいね、にゃーくん。にゃーくんがいてくれたら、俺なんにもいらない。 って…そう言うの。 あ、にゃーくんって、おれの名前。 ヨウくんが付けてくれたの。 だからおれね、お月さまにお願いしたの。 だってまん丸お月さまがにっこり笑ってたから、きっとお願いをきいてくれると思って。 お月さま、お月さま おれを人間にしてください。ヨウくんの友達になれるように。 そしたらね、銀色の粉がキラキラふってきて、それはすっごいすっごい綺麗でね……でも耳としっぽについたそれがちょっとくすぐったくって、プルプルってやっちゃった。 それがしっぱい! 気付いたら人間になってたんだけど、ぷるぷるやって粉がとれちゃった耳としっぽは残っちゃった! お月さま~ まほうはもうちょっと、かんぺきにお願いします そう言って見上げたけどお月さまはにこにこしてるばかりで…… でもその顔を見てたら、耳としっぽがあるくらいなんでもないやって思ってね。 それからうれしくてうれしくて、ヨウくんを起こしたの。 お月さまの光に白く照らされておふとんで眠ってる、かわいい顔をしたヨウくんを。 ヨウくんは、ひって息を吸ったまま固まって……でも俺の耳に目をやって、「にゃーくん?」って言ってくれたよ。 お月さまのまほう、かんぺきだった! だって、耳としっぽのおかげでヨウくんが気付いてくれたから! 「こんばんは!にゃーくんです!」 そうしたらヨウくんが、「にゃーくんて大きかったんだね。子どもかと思ってた」って。 おれ、おおきいの? よくわかんない。 あ、でも手も足も、ヨウくんよりずっと長いね。
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