2 ドキッ!水着パニック!ドール オライオン登場!

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2 ドキッ!水着パニック!ドール オライオン登場!

その日は、俺は、朝から、上機嫌だった。 「どうしたんだ?正勝、顔が赤いぞ」 毎日、一緒に登校している敦が心配そうに、俺を見た。 俺は、慌てて言った。 「何でもない。大丈夫だ」 「そうか」 敦が言った。 「そういえば、今日は、3年との合同体育だったな。確か、水泳、か」 水泳。 俺は、どきん、とした。 そう。 今日は、俺のクラスとルイのクラスが合同で、水泳の授業があるのだ。 「そ、そうだったかな」 俺は、何気なさを装って言ったが、喜びは、隠せなかった。 だって。 ほぼ全裸のルイと、皆さん公認のもとに、あんなことや、こんなことを、キャッキャッウフフと出来るのだ。 これが、興奮せずにいられるかっつうの! 敦は、呆れた顔で言った。 「とにかくはしゃぎすぎて、恥ずかしいことだけはしないでくれよな」 「もちろんだ」 俺は、言った。 「公序良俗に反する行いなど、俺がすると思うか?」 「いや」 敦が指で眼鏡を押し上げながら言った。 「それなら、別にいいんだが。俺は、用があるから、先に行く」 そう言って敦は、走り去った。 何だろう。 俺は、奴の背を見送りながら、首をかしげた。 子供の頃から兄弟同然に育った敦と俺だったが、時々、奴は、俺の理解の範疇を越える行動をとることがある。 まあ、いいか。 俺は、気を取り直して歩いていた。 「おはよう!正勝」 俺の耳元で声がして、振り向くと、ちっさいおっさんこと、アンバーがいた。 「どうしたのかしら?今朝は、やけにご機嫌ね」 「ほっといてくれ」 俺は、奴を無視して歩を速めた。 空気を読めないのか、奴は、俺にまとわりついてきた。 「何?何なの?何があるのかしら?」 「パラダイス~!」 アンバーの雄叫びが辺りに響き渡る。 幸いなことに、俺の他には、奴が見える者は、いない筈なのだが、俺は、しぃーっと、アンバーに言った。 「だから、嫌だったんだ」 「ステキ!ステキ!360度、パノラマで、裸のメンズが見放題よっ!」 アンバーは、プールサイドにそれぞれ腰を下ろしてくつろぐ水着姿の男子生徒たちの間を飛び回って奇声を発した。 「どの子も、この子も、ぽっちゃり、食べ頃ねぇ。目の保養だわぁ」 アンバーは、俺の側にいた敦の肩に留まって、奴の体をガン見しながら言った。 「特に、この子は、いいわぁ。いい体してるし、超イケメン!タイプだわぁ」 「やめろ!」 俺は、小声で言った。 「俺の幼馴染みに手を出そうとすることは、許さん!」 「あらぁ」 アンバーが、ウフフっと笑った。 「ちょっとした、ジョークよ、ジョーク」 「はっくしゅっ!」 敦がくしゃみをして、その反動でアンバーが肩から飛ばされて、プールに落ちた。 「助けて!」 アップアップしているアンバーを見て、俺は、笑いを堪えるのに必死だった。 敦が言った。 「風邪かな。何だか、ぞくぞくする」 「ちょっと!手を貸すくらいしなさいよ!」 プールから頭を出したアンバーがキィキィ言ったので、仕方なく俺が手を貸そうとした時だった。 「あー、諸君。注目!」 白髪のマスク姿の不良が、拡声器のマイクを片手に言った。 「このプールは、今から我々、夢魔連合が支配下に置くこととする」 「何だ?」 生徒たちが、ざわめき出す。 敦が眉をひそめる。 「何だ?あれは」 「あいつは!」 俺は、はっとして、アンバーを見た。 あれは。 この前、俺たちを襲った不良だった。 白髪の不良は、言った。 「俺の名は、羅刹。よく覚えておくように。そして、今、プールの中にいるのが」 何かの影が水中を移動し、アンバーへと近づいていた。 次の瞬間。 巨大なシャチが大きな口を開けて、アンバーをひと飲みにしようとした。 「いやぁっ!助けてぇ!」 「アンバー!」 俺は、気がすすまなかったが、アンバーをわしづかみにして、引き寄せた。 ほぼ同時に、シャチの口が閉まる。 アンバーは、俺に掴まれて、キィキィ言った。 「酷いことすんな、われぇ。覚えとれよ、後で、泣かしたるさかい!」 「アンバー!あいつ、この前の奴じゃないか?」 俺に言われて、アンバーは、白髪の不良を見た。 「あれは!」 アンバーが叫んだ。 「正勝、変身よ!」 「いや、ちょっと、まだ、早くない?」 俺は、言った。 「ただの余興かもしれないし、ちょっと様子を見てからでも、いいんじゃないの」 「何、ゆうとるんじゃ、われ」 アンバーが言った時、横で、敦が叫んだ。 「ルイ!」 白髪の不良がニヤニヤ笑いながら、ルイの手を引っ張り、無理やり抱き寄せようとしていた。 「何するんだ!やめて!」 ルイは、必死に、抵抗していたが、何か、黒い影の様なものがルイを縛りつけ、不良の元へと引き寄せた。 「やめて!」 「ルイ!」 俺がルイを呼ぶと同時に、アンバーが辺りの時間を止めた。 「エンゲージ!」 俺は、叫んだ。 「インフィニット ラブリー チェンジング!」 「何?」 白髪の不良、羅刹が叫んだ。 俺の裸の体を光が包んだ。 パァン。 光が弾ける。 俺は、赤いミニチャイナドレスに、黒のスパッツという姿になってキュートなポージングをとっていた。 「ラブリー 、プリティー、スウィーティー!溢れる魅力は、無量大数!」 俺は、ばちん、と、ウィンクした。 「キューティー ダーリング!」 「気色ワルー!」 何だか知らんが、羅刹が悶え苦しんでいたが、やがて、叫んだ。 「行け!シャッチーナ。殺ってしまえ!」 「シャッチー!」 プールからシャチの頭をした怪獣が飛び出して、俺に向かってきた。 「ラブリー チェーン!」 俺は、手からピンクの鎖を出して、怪獣を縛りあげた。 「オラオラ!覚悟しろやぁ!」 俺は、叫んだ。 「ラブ ピンク トルネード!」 バラの花弁が怪獣を包み込んだ。 怪獣が断末魔をあげる。 「しびし」 「まだ、だ!」 羅刹が叫ぶ。 「ジャイアント イリュージョン!」 「かしこまり!」 消えかけていたシャチの怪獣が叫んだかと思うと、どんどん、巨大化していった。 「ふっふっふ、このジャイアントシャッチーナに勝てるかな、キューティー ダーリングよ」 羅刹に言われて、俺は、即答した。 「無理です」 「はやっ!」 アンバーが言った。 俺は、アンバーに言った。 「だって、絶対に無理だって」 「では、ルイちゃんは、戴いていく」 ルイを担ぎ上げて去ろうとする羅刹に、俺は、叫んだ。 「ちょっと、待ったぁ!」 俺は、アンバーをチラッと見て言った。 「どうにか、出来ないのか?」 「うーん」 アンバーは、言った。 「あるっちゃ、あるんだけどぉ」 「出せ!直ぐに」 俺に言われて、アンバーは、ぽいっと、何かを俺に向かって投げた。 それは、空中で回転しながら大きくなっていった。 俺は、それを掴もうとして、その、何かに切り裂かれた。 「ぎゃあぁぁっ!」 「にぎゃあぁっ!」 俺は、なんとか、それを捕まえた。 それは。 ふてぶてしい、怒り狂った白猫だった。 「それは、古の魔道具、ドール ・オライオンよ!意識を集中させて!その子と同化したら、思う通りの姿になってくれるわ」 「何?」 俺は、白猫を見た。 怒りのこもった目で、俺を見ていた。 「無理だろう」 「やらなきゃ、殺られるだけよ!」 アンバーが言う。 俺は、仕方なく、暴れる猫を抱いてナデナデした。 「いい子ちゃんでちゅね。よしよし、もう、大丈夫でちゅよ」 猫が、少し落ち着いたところで、俺は、目を閉じ、一心に念じた。 何とか、してくれぇ! 俺の体と、白猫、オライオンの体がふわりと、宙に浮き、重なった。 光が溢れる。 俺たちは、一つになり、どんどん、巨大化していった。 気がつくと、俺は、巨大なごっつい、ミニチャイナドレス姿のロボットに変化していた。 「何じゃ、これぁ!」 「キシャーっ!」 ジャイアントシャッチーナが目前に迫ってくる。 俺は、夢中で念じた。 何か、武器になるものを! 手に、巨大な冷凍サンマが現れた。 俺は、それで、シャッチーナを両断した。 「雷電影心斬り!」 シャッチーナが消滅した。 「しびしび!」 「くっ!」 羅刹が走り去っていくのが、見えた。 「覚えていろ!」 奴は、走り去りながら、拡声器で叫んだ。 「必ず、次は、殺す!」 変身を解いた俺は、直ぐに、プールサイドで気を失って倒れているルイの元へと駆け寄った。 「ルイ!しっかりしろ!」 ルイが低く呻いた。 唇が戦慄くのを見て、俺は、たまらず、思った。 人工呼吸、だ。 急いで、人工呼吸しなくては! 俺は、そっと、ルイを寝かせると、ルイの唇へと近づいていった。 もう少しのところで、ルイが呻いて言った。 「鼻息が、荒い」 俺は、それから、しばらくの間、立ち直ることができなかった。
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