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7 恋の夏の乱!乙男乱舞!対決!クマーズ(後編)
「とにかく、だ」
親父は、白髪混じりのオールバックを撫で付けていった。
「これは、そんな単純なことではないんだよ、政勝」
ここは、プールの近くのカフェテラス。
俺たちは、プールを出て、ここに場所をうつして話し合っていた。
「何が、単純なことじゃないんだよ、親父」
俺は、きいた。
「あんたがこの二人の子供と、何か怪しいことしてるってことだろ?」
信じられない。
いろいろ、まずい案件だろ、これは。
あっ、でも、本当はこいつら中年男だったっけ?
俺が、いろいろ考えていると親父が言った。
「この子達は、本当に、健気な子達なんだ」
健気?
親父は、話を続けた。
「ぐだぐだのだめな大人たちにかわって、なんとか、夢魔連合を建て直そうとがんばっている子達なんだ。それなのに、諭吉のやつには、気持ち悪いとかつまはじきにされてるし」
「えっ?」
諭吉って。
俺は、きいた。
「諭吉って、敦の親父さんのことじゃね?」
「ああ、まあ、その」
親父が、あわあわ言った。
「そうだが」
「夢魔連合って、何だよ?あんたたち、何、やってんだよ?」
俺は、きいた。
「まさか、親父たちが黒幕ってわけ?」
「それは」
親父が腕時計を見て、そそくさと立ち上がった。
「また、次の機会に説明する。約束の時間に遅れてしまうから、父さんは、もういくよ、じゃあ」
「じゃあ、って」
立ち上がると、親父は、振り替えって言った。
「くれぐれも母さんには、内緒だぞ」
そして、親父は、去っていった。
「ええっ!」
俺は、何がなんだかわからなくなってきてその場に立ち尽くした。
そんな俺に、修羅と阿修羅が話しかけてきた。
「あの、これから、どうする?」
「一応、クマーズは、外で待機してるんだけど」
店の外から、白熊とヒグマの怪獣がヨダレを垂らしながら、こっちを見ていた。
「どうするって」
俺は、ため息をついた。
「そういうわけで、急遽、戦闘することになりました」
「はい?」
俺に神社に呼び出された敦とルイが、豆鉄砲を喰らったような顔をして、きいた。
「どういうこと?」
「まったく、わからん」
俺は、言った。
「何がなんだか、俺にも、全然、理解できない」
「なんで、戦わなきゃならないわけ?」
ルイが、きいた。
俺は、困りきっていた。
「何か、あの二人が、支給された怪獣を使わないと、次から、支給されなくなるからって、言うから」
「ええっ!」
敦がきいた。
「怪獣って、支給制なの?」
「何か、ぐたぐだいってるようだけど」
子供たちが、言った。
「遠慮なんか、しないんだからね」
「今日こそ、お前たちを倒す!」
「ぐぎゃおぉぉぉ!」
白熊とヒグマが、雄叫びをあげる。
ルイが、ため息をつく。
「ほんとに何がなんだか、よくわからないけど」
俺たちは、やけになって、叫んだ。
「エンゲージ!」
光に包まれる。
「インフィニット ラブリー チェンジング!」
俺の体を光が覆っていく。
次の瞬間。
俺は、赤いミニチャイナドレスにスパッツという姿で、キュートなポージングをとって、立っていった。
「ラブリー、プリティ、スウィティー!溢れる魅力は、無量大数!」
俺は、キュートに言った。
「キューティー ダーリング!」
「同じく、キューティー ラヴァー!」
「キューティー スウィートハート!」
ミニキモノドレス姿の敦と、ミニのシフォンドレス姿のルイが叫んだ。
「行け!クマーズ!」
「奴らを、必ず、殺せ!」
二人がいうと、クマーズは、俺たちに向かって、飛びかかろうとした。
が。
「スウィート メルティー ストロング アロー!」
キューティー ラヴァーが、容赦なく攻撃を仕掛けた。
キューティー スウィートハートも、だ。
「デンジャラス ハート アタック!」
巨大なハートに、クマーズが飲み込まれる。
「しびし」
「まだまだ!」
「ジャイアント イリュージョン!」
修羅と阿修羅が言うと、ルイが言った。
「ええっ!まだ、やるの?」
「お約束なので」
「すみません」
二人が、ルイに頭をぺこりと下げる。
怪獣が叫んだ。
「かしこまり!」
影が巨大化していく。
二体の巨大な怪獣を前に、俺たちは、顔を見合わせていた。
敦が仕方なく、言った。
「クロム!」
「なんか、よくわからんが、スレイザー!」
クロムがどこからか現れて言った。
「来い!」
「にゃごーん!」
「アンバー!」
俺も叫んだ。
「ここに、いるわよん」
アンバーが言った。
「出でよ!オライオン!」
「にぎゃぁぁぁ !」
珍しく、すぐに、オライオンが現れた。
俺と敦は、やる気は、なかったが、巨大化した。
「さあ!殺ってしまえ!」
「奴らを殺せ!ク」
二人が言いかけたところで、怪獣が、俺たちに斬られて、断末魔をあげた。
「しびしび!」
「ええっ!」
「やっつけ感、半端ない!」
二人の子供に、ルイが冷たく言った。
「僕たちも、暇じゃないんだからね」
「むうっ!」
修羅と阿修羅が、走り去りながら叫んだ。
「なんだよ、大人なんて嫌いだ!」
「みなさん、お疲れ様でしたっっ!」
「まったく、何だったんだ」
敦が汗を拭きながら、言った。
ルイが、ぷんぷんして言った。
「ほんとに、傍迷惑な連中なんだから」
「まあ、そういうな」
俺は、言った。
「あんな、連中だって、一応、一生懸命、生きてるんだから」
「本当」
ルイは、言った。
「政勝君は、優しいよね」
「ああ」
敦も言った。
「誰にでも、な」
「なんだよ、それ」
俺は、ため息をついた。
「全然、誉めてないだろ」
「そんなこと、ないよ」
ルイが、気を取り直すかのように明るく言った。
「これから、どうする?」
「ゲーセンでも行くか?」
俺が言うと、敦が言った。
「いいな、それ」
俺たちは、街へと向かう階段を降りていった。
夏は、まだこれからだった。
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