8 乙男のピンチ!魔法乙女 ラブリー エクスクラメーションズ 来襲!

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8 乙男のピンチ!魔法乙女 ラブリー エクスクラメーションズ 来襲!

俺とルイと敦の3人は、海辺にある俺の親父の別荘へときていた。 夕方には、親父も到着する予定だった。 俺は、この前の修羅と阿修羅の話をかいつまんで、二人に話していた。 つまり、親父の援交疑惑以外ってことだ。 だが。 「ようするに、お前の親父さんが、あの二人のパトロンだったっていうことか?」 敦は、きいた。 「親父さんは、なんであの連中の支援をしているんだ?弱味でも握られてるのか?」 「匂う、ね」 ルイが言った。 「これは、きっと、支援にかこつけた、ただの援助交際だよ」 ルイの鋭い言葉に俺は、動揺していた。 しかし、敦が笑って言った。 「まさか。あの二人、可愛い子ぶってても所詮は中年男だぞ。いくらなんでも、それはないだろう」 「そうかな」 ルイは、なかなか納得しなかった。 「おじさんだって、中年男だし、わからないよ。男と男の間には、いろんなことがあるんだから」 本当。 ルイは、意外に鋭いのだ。 男と男の間には、俺たち、素人では、予想もできないあれやこれがあるものなのだ。 「とにかく、せっかく来たんだから、海へ、行こうぜ」 俺は、話を誤魔化すために、二人を海へと誘った。 夕方。 親父が、派手な赤いベンツを運転してやってきた。 ちなみに、このベンツには、親父のつけた名前があって、『ゴールデン パトラッシュ号』とかいうらしい。 そんなことよりも。 親父は、思わぬ客をつれてきた。 「親父?」 敦が、驚いた表情を浮かべていた。 それもそのはず。 敦の父親で、俺の親父の友人である伊崎 諭吉という人は、謎の多い人物だった。 昔、神父をしていたが、数年前に、還俗して、それ以来、山奥に隠って暮らしているという敦の親父は、バリバリのゲイだった。 今日は、その恋人である見上 楓さんも一緒にきていた。 このタイミングで、この人が来たことに、俺は、嫌な予感がしていた。 やっぱり、全ての黒幕は、この人たちなのか? 俺たちは、まずは、夕食をとることにした。 俺の手料理だ。 ちょっとしたものしか、用意は、できていなかった。 「すごいな」 敦の親父さんは、驚いたように言った。 「ご馳走じゃないか、。これを、君たちが作ったの?」 「そんな」 俺は、エプロン姿で少し照れて言った。 「たいしたものも、できなくて」 「パエリアに、カルボナーラ、それに、ピザって」 見上さんが、言った。 「これ、全部、手作りなの?」 「いえ」 俺は、言った。 「ピザの土台だけは、市販のものを買ってきたんです」 「すごいな、君」 見上さんが言った。 「君は、いいお嫁さんになれるよ」 「えっ、マジで?」 俺は、笑った。 ルイが言った。 「本当、政勝君は、外見以外なら理想のお嫁さんなのにね」 「いや」 敦が言った。 「外見を凌駕するほどに、乙女だ」 俺たちは、みんなで笑った。 なごやかな、食事の後。 俺たちは、リビングのソファに腰かけてコーヒーを飲んでいた。 「ところで、政勝君」 敦の親父さんが口を開いた。 「最近、危ない遊びをしているそうじゃないか」 「危ない遊び?」 俺が聞くと、彼は、頷いた。 「ああ」 「何のことです?」 俺は、言った。 「だいたい、俺は、野球部の部活があるから、遊んでる暇なんてあまりないですよ」 「そうなのか?」 敦の親父さんが、敦にきいた。 敦は、頷いた。 「俺も勉強が忙しくって遊ぶって言っても、たまにこいつらとつるんでプールとかに行くだけだし」 「ああ、もう」 突然、俺たちの前にちっさいおっさんが現れた。 ケサランパサランみたいな丸いポンポンに頭と手足がついてるみたいな格好をしたそのちっさいおっさんは、キィキィ言った。 「らちが明かないっていうの!」 「リリアン!」 敦の親父さんが諭すように言ったが、リリアンとか言うちっさいおっさんは、やめなかった。 「あんたたち、魔法少女になったんでしょ?」 「ええっ?」 俺たちは、ぎくりとしていた。 そのとき、アンバーが叫んだ。 「リリアン パイセン!」 「ええっ?」 リリアンが急に現れたアンバーを見て叫んだ。 「アンバーちゃんじゃないの!久しぶりね」 抱き合って喜ぶ二人の姿に、俺は、きいた。 「アンバー、知り合いか?」 「やだ、知り合いだなんて」 アンバーが言った。 「この方は、伝説の戦闘妖精 リリアン様よ!」 「やだわぁ、この子ったら。伝説だなんて、言い過ぎよぉ」 リリアンがくねくねしているのを見て、俺は、少しひいていた。 まさに。 類は、類を呼ぶ。 オカマは、オカマを呼ぶのだ。 「誰が、オカマよ!」 リリアンが、きっ、と俺を睨んで言った。 「かわいくない子ね。これが、礼二郎の息子なの?」 「本当に、不祥の息子で」 親父が頭をかきながら、言った。 俺は、言った。 「誰が、不祥の息子、だ、誰が!この、援交親父が!」 「援交?」 みんなの視線が俺と親父に集まった。 親父は、あわてて、俺を引き寄せて、耳元で言った。 「だめだろ!内緒だって、言ったじゃん!」 「母さんに、だろ」 俺が言うと、親父が言った。 「友だちにも、だって」 「援交って、礼二郎、まさか、うちの修羅と阿修羅じゃないだろうな」 敦の親父さんが、厳しい口調で言った。 親父は、慌てて、言った。 「違う、というか、なんというか、そう、恋は、魔物だからね、ノンストップだよ」 「何いってる」 敦の親父さんが、ひいていくのが、わかった。 「とにかく、だ」 親父が言った。 「我々には、魔法少女であるという、強い、絆があるわけだ」 「強い絆ですか」 敦が、言った。 「まあ、ある意味、そうかもしれない」 「でも、驚きだね」 ルイが言った。 「政勝君と敦のお父さんたちが、僕たちと同じ、魔法少女だったなんて」 「そう」 敦の親父さんが頷いた。 「驚きだ」 「本当に、乙男は、遺伝するのかしらねぇ」 リリアンが言うと、敦の親父さんが、真顔で言った。 「んなわけねぇだろ」 そのときだった。 ガラスの割れる音がして、女の声が響き渡った。 「悪のはびこるこの世界」 「きよらにしましょう、我々が」 「誰だ?」 親父が言って、俺たちは、みんな、声の方を振り向いた。 そこには。 キュートな、ポージングで立っている二人の女装の魔法少女がいた。 ミニの赤と、黒の、ガーリーなドレスに身を包んだ二人は、叫んだ。 「私たち、愛と正義の魔法乙女!」 「ラブリー エクスクラメーションズ!」 「何ですと?」 アンバーが言った。 「聞いてないわよ!こんな連中の話!」 「こいつらは」 敦の親父さんが、嫌そうに言った。 「我々を付け狙う、ちょっと、頭があれな、魔法少女たちだ」 「誰が、頭がちょっと、あれなんだよ!」 赤い方の魔法乙女が言った。 「そっちの方こそ、男ばっかでつるんで、気持ち悪っ!」 「今日こそ、お前たちを倒す!夢魔の王!」 「キャアァァアア!!」 突然、黒い方の魔法少女が悲鳴をあげた。 「ち、痴漢よぉ!」 「ラブリー サージェントチェリー!」 赤い方の魔法少女が振り向いて叫んだ。 「ちょっと、そこの坊主!あたしのラブリー サージェントチェリーになにしちゃってるのよ!」 「ええっ?」 俺は、きょとんとして言った。 「いや、よくできてるなぁ、と思って」 「ラブリー アマリリス!」 ラブリー サージェントチェリーが赤い方の魔法少女に泣きながら駆け寄った。 「この、変態が、あたしの胸をもんだのよぉ!」 「なんですって?」 ラブリー アマリリスが怒りをむき出しにして叫んだ。 「よりにもよって、乙女のむ、胸をもん、揉んだですってぇ!あたしだって、まだ、揉んでないのに!」 「いや、本当、良くできてるなぁって思って」 俺は、感心して言った。 「ほんとに、本物の女の子みたいだな」 「失礼な!この、そこつ者め!」 ラブリー アマリリスが、俺をきっ、と、見て言った。 「死にさらせ!この変態男!」 ラブリー アマリリスは、俺に向かってハートのビームを放った。 「キューティー フラワー ハレーション!」 「何!」 俺は、慌てて避ける。 爆発がおこり、壁に大きな穴が開いた。 「大丈夫!政勝君」 ルイが、俺に駆け寄ってくる。 「怪我は、ない?」 「何だ!お前たちは!」 敦が叫んだ。 「何者だ?」 「だから」 二人が、うんざりしたように言った。 「あたしたちは、魔法乙女 ラブリー エクスクラメーションズ、だって、いってるでしょ!」 「はあ?」 ルイが言った。 「何、それ?」 「説明しよう」 敦の親父さんが、俺たちの方へと歩みよりながら、言った。 「この連中は、本来あるべき魔法少女の姿であるものだ。つまり」 「モノホンの女、お、ん、な、よ!」 リリアンが言った。 「あんたたちと違って、本当の乙女なわけ!」 「何!」 敦が叫んだ。 「男じゃないのか?」 「ええっ!」 俺が、あわあわ言った。 「ご、ごめん。そうとは、知らずに、俺、胸を触っちゃったよ!」 「触った、ですって?」 ラブリー サージェントチェリーが叫んだ。 「わしづかみにして、もみもみ、したじゃない!もう、お嫁にいけなくなっちゃったじゃない!」 「なんですって?」 ラブリー アマリリスが、わなわな、震えながら言った。 「あたしのかわいいラブリー サージェントチェリーのお胸をこの変態坊主野郎が、揉みしだいたですって?」 「いや」 俺は、慌てて言った。 「そこまでは、してないって。ちょっと、触っただけだし」 「黙れ!愚民!」 ラブリー アマリリスが、びしっと俺を指差して言った。 「お前は、やっぱり、絶対、100%殺す!」 「ああ?」 俺は、きいた。 「何、こいつ?」 「気にするな、少し、病気が進行してるだけだ」 敦の親父さんが、ため息をついた。 「困ったものだ」 「何、人を深刻な病人みたいにいってんだよ!」 ラブリー アマリリスが叫んだ。 「さっさと、表に出ろや!この、変態集団め!」 俺たちは、驚きとショックから、まだ、立ち直っていなかった。 本物の女の魔法少女? 魔法少女って、男だけじゃなかったのか? とにかく、これが、ややこしい事件の始まりだった
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