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対面(壱)
「お疲れ様でした」
「お疲れ~。あ、そう言えば明日から連休取るんだって?」
「ええ。有休が残ってるので実家の方の片付けに帰ろうかなと」
「・・・・・・そうか。あまり無理するなよ。何かあったら何でも言ってくれ。相談に乗るよ」
「はい・・・有難うございます」
普段厳しい先輩の優しい声かけに驚きながら、俺は礼を言うとそそくさと会社を出た。
高校卒業後、都会に夢を持ち田舎から上京したが現実はそう甘くはなかった。
バイトで稼いだ少ない貯金で、日々の生活をしていくだけで精一杯だった。到底夢見ている暇はない。
取り敢えず、自分が出来るだろうと思うような仕事中で、比較的給料の高い工場で働きだしたが、中々自分が思い描いていたような生活には程遠い。
この会社は、大手企業との契約があるとかで仕事が切れないのはいいが、従業員が少ないので忙しい時などは休みが一カ月ない何て言うのはざらだった。労働基準という言葉は無縁で、毎日が働きづめだった。
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