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「いいよ。相変わらず大した物はないけど食べていきな」
「有難うございます」
ふと、俺は壁に隠れてこちらに来ない橋本に気が付いた。
「橋本。どうかしたのか?」
と、橋本に言うと
橋本はチッっと舌打ちをしただけで動こうとしない。
親子喧嘩でもしているのかと思い、巻き込まれるのは面倒なので、「すみません」と声を掛けて橋本の部屋へ戻ろうとした。
「聞いたよ」
橋本の母親は姿を見せない息子に声を掛けた。
「ここ三日ばかり仕事に行ってないそうだね」
その言葉を聞き橋本はようやく母親に姿を見せる。橋本の母親は息子の方を見ず野菜を切りながら
「無理に行けとは言わないよ。仕事なんてやってみないと分からないもんだからね。もし、自分に合わないと思うのなら、違う仕事をやってみてもいいんじゃない?」
ここでようやく橋本の母親は息子の方を見た。
橋本は母親が振り向いたと同時に顔をそむけたが、小さく
「ああ」
と言うと二階へ上がって行ってしまった。
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