橋本

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暫く二人して黙っていたが、口火を切ったのは橋本の母親の方だった。 「全くね。難しいね子供を育てるのは。高校の時、就職活動が面倒くさくって親戚の所で世話になったのはいいけど、結局今その仕事が嫌になってるのよね。だから言ったのよ。大変でも、自分がやってみたい職業に就いた方がいいってね。なのに・・・・・・」 母親は大きなため息をついた。その姿を見ていると俺は自分の母親の事を思い出す。 俺自身も高校卒業後、特にやりたい事が決まっていたわけではないがこんな田舎にいるよりは東京に出れば何か見つかるだろうと思っていた。しかし、日々の生活をする為のお金を稼ぐので精一杯でやりたい事を見つけるどころではなかった。 その間も、母親からの俺を心配する電話がしょっちゅうかかってくる。それをうっとおしいとしか思っていなかった。 今、目の前でため息をつきながら息子を想う橋本の母親を見ていると、俺の母親もこうやって俺の事を心配していたのかもしれないと思うと胸が苦しくなった。
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