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「ごめんね。せっかく遊びに来てくれたのにこんな事話して。どう?ご両親は元気にしてる?」
そうか。知らせていなかった。
しかし、今の俺は両親が死んだことを言う事が出来なかった。橋本の母親に自分の母親を重ね、親が子を想うという事が何となくわかった今は言ってしまうとそのまま号泣し兼ねなかったからだ。
「え・・・・・・ええ。元気ですよ」
咄嗟に嘘をつく。橋本の母親はニコリと笑うと
「そう。良かった。もう子供が独り立ちして手がかからなくなったら、親が子供にしてあげられることは自分達が健康でいてあげる事だからね。ご両親によろしく伝えてね。さ、ご飯食べようか」
橋本の母親は立ち上がりお尻に付いた埃を払うと家に入って行った。
その後三人で食事をした。橋本の父親は岩手の方へ出張へ行っているという事で留守だった。
仏頂面の橋本を入れての食卓だったが、俺は気にせず橋本の母親と楽しく話しながら食事をした。自分の親ともこんなに話さなかったと思う。もしかしたら、出来なかった事をここでしているのかもしれない。
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