対面(壱)

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約二時間後やっと地元の最寄り駅に着いた。ホームに降りるとすぐに相馬に電話を掛ける。相馬も俺からの連絡を待っていたのかワンコールで出た。 「今どこ?」 相馬はすぐに聞いてきた。 「未踏駅」 「そうか。さっき病院って言ったんだけど、もう斎場の方へ運んだからそっちに来いよ」 「斎場・・・・・・」 到着するまでの間、自分の知らない所で色々と事が進んでいるという不安を感じながらタクシーに乗り斎場の名前を告げる。斎場の営業時間は知らないがこんなに遅くまでやってるものなのか。これまでに、葬式を経験したことがないわけではない。しかし、いざ自分の親の事ともなると冷静に物事を考えられなくなっている。タクシーが斎場に着くと金を払い転げる勢いで走って中に入る。 ロビーの四人掛けのソファーの所に相馬が一人座っていた。 「おう」 厳しい表情をした相馬が俺に声を掛けながら立ち上がる。相馬と会うのは十数年ぶりか。子供の頃はお互いの家に泊まりに言ったり旅行に行ったりしたが、成長していくとお互い自分の事に忙しくなり疎遠になっていた。神経質な所があるかと思うと大雑把な所もあるという少しつかめない奴だった。今、目の前にいる相馬は綺麗にカットされた坊ちゃん狩りに眼鏡。眼鏡の奥の丸い可愛い目。中肉中背の体に喪服もきちっと着こなしているが、ネクタイが皺くちゃだった。そんな相馬の性格が丸出しの風貌を見ながら 「どういう事なんだ?事故って?」 近付きながら聞く。
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