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きぬは思い出していた。 ある日。きぬが奥様の朝ご飯を用意している時、珍しく祖母が台所に来て 「きぬ。チヨとハルはどうですか?母親の方にばかり面倒をかけているのも気が引けるのよ。これ・・知り合いに貰った物なんだけど」 と懐から出したものは紙に包まれたにんにくの様なものだった。 「これは?」 「にんにくですよ。これを毎日の食事に少しづつ入れてあげなさい。にんにくは体にいいですからね。臭いがきついから本当に少しづつですよ。それと、私がこんな事をしたという事は決して人には言わない事。照れ臭いですから。いいですね」 ときぬに渡した。 その時のきぬは感動したものだった。普段、孫と母親に話すことも会う事もしない祖母が母親の体を心配してにんにくを持ってきたのだから。 「有難うございます。奥様もお喜びになると思います!お約束は守ります」 と、顔を上気させお礼を言ったものだ。
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