ほたる祭りの夜4

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ほたる祭りの夜4

 怜奈の実家の広い敷地内には4つの建物が建っていた。母屋とよばれる二階建ての日本家屋には部屋が10もあるらしい。そのほかの3つの建物は平屋建てだったが、それぞれが風呂、トイレ、台所を備えた立派なつくりになっていた。それらの離れには今はだれも住んでいないらしい。  現在の二敷家の家族構成は、怜奈と両親だけだ。  怜奈の祖父と祖母は父方、母方ともに鬼籍に入っていた。たった3人で暮らすにはあまりに広い家だった。広い庭には4本の桜が植えられており、春にはそこでお花見も楽しめるようだ。二敷家では近所の住民たちを招いての花見会が4月の恒例行事だったようだが、ここ2,3年はそれもない。  母屋に通された堂宮は、そこで怜奈の母がだしてくれたアイスコーヒーを流し込んだ。怜奈は「支度したくしてきます」と短く述べると自室に戻ってしまった。  怜奈の実家は地元の名家であるに違いなく、江戸時代は美鱒町の東側を治めていたようだ。怜奈の母もまた容姿端麗でエレガントな女性だった。  彼女は簡単な自己紹介とともに美鱒町の最近の出来事を短く話すと奥へと引っ込んでしまった。怜奈の実家の応接室で手持ち無沙汰な堂宮の前に浴衣に着替えた怜奈があらわれた。
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