闇夜の徘徊者

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 男は雑木林の奥までみゆきを連れ込むと、そこに予め用意しておいたランタンに灯りをともした。今度は幾分強めの照明が周囲を照らした。 「よし、俺のテリトリーに到着したぜ。ここなら、たとえ大声で叫んでも、そう簡単にはテントまでは届かない。とはいえ、まだみんな起きているだろうから、俺の許可がでるまでは静かにしていろ。いいか、なんども云うが、俺の云うことを素直に聞けば、すぐにみんなのもとに帰してやる。いいな、分かったか?」  みゆきは力なく頷いた。 「よしよし、いい子だ。俺は素直な女が大好きなんだ。へへへへへ、だからよう、とにかく素直になんでも俺の云うことをきくんだ。いいな?」  みゆきは頷くしかなかった。 「……あの……本当にすぐに帰してもらえるのですか?」 「ああ、嘘じゃねえよ。へへっ、まずは空を見上げてみな。綺麗なお星さまがいっぱいでてるよ」  男に促されて、みゆきは天空を見やった。そこには都心では想像もつかないような美しい星々が天空を彩っていた。恐怖に怯えるみゆきは、小さく息をのみながら「はい、綺麗です……」と呟いた。
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