春の女神は………

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春の女神は……80 「 出会い系? なんですか、それ、それ まさか、違いますよ 」 ムッとして返す。    「 なんで男と出会い系で出会うんですか 」 「 あ、そうか、 普通は会わないか 」 あっけらかんと答えるリョウに。 「 普通?」 と更に早瀬は眉を顰める。 それを見て、 いかにも余計なこと言っちゃったかな?風体のリョウは 半笑いしながら、 取り繕うように話題を変えた。 「 今のってどこだろう? 東京だよな、スカイツリーが見えてるから。 商店街とか言ってなかった?」 「 あの位置でスカイツリーが見える所ですよね 」 早瀬もしばし考え込んだ。 「 下町?駅どこだろう? 浅草の近くか、 台東区、、、 御徒町くらい? 」 以外に詳しい地理の知識に改めてリョウの顔を見ると、 「あー、俺、暫く現場があの辺だったんだよ。 道路の工事でさ 」 「 道路? 道路の工事でクレーンがいったんですか?」 「 え? あぁ、クレーンの免許取る前の話! あの辺ってさ 町工場が多いところだから、朝から晩まで働いて、腹減ったら商店街でおかず買って食べるって感じの生活? そういうのって、良いよな… いい街だよな。 コンビニも悪かないけど、食べたいもの毎にちっちぇい店があって、 道歩いてるといい匂いがしてきて、ふらふらって。 俺も良く買ったよ、昼飯でも仕事帰りに、店の中で食わしてくれるとこもあって、 仲良くなったおばちゃんもいたんだけど 」 「 もう行ってないんですか?」 「 うん、だって、こっからだと大変じゃん。 現場でも近くにいなきゃなかなか行けないよな。 いっつも、ピンクのエプロンにおたま持って店の前で、 声かけてくれてさ、 お兄さん腹減ってる顔してるって、 おばちゃん、元気かな……」 おばちゃんを思い出したせいか少し寂しそうにそう言うリョウはやたらと可愛かった。 いや、それはそうと、ミントだ。 「 あそこの感じ、その御徒町の近くの商店街って感じでしたか?」 「 うーん、少し離れたところに、大きな道から入ったところにも、もう一個あった。 そっちかもしれない… いくらなんでも、俺の行ってた街ならまだシャッター街なんかにはなってないと思うから 」 「 それ、どこですか?」 「 早瀬さ、気になるならテレビ局に電話して聞きゃ良いじゃん 」 「 え! そんなことしても、 教えてくれますか? 」 「 いや、知らんけど、おしえてくれるんじゃない? 多分 」 「 そんな、無責任な 」 「 なんて番組だっけ?」 以外に手際よく検索を始めるリョウ。 「 あ、これじゃね? ○×フック、東京のあの街この街、 下町散歩。 🌸○テレビだ。 早瀬これ 」 リョウは自分のスマフォを早瀬に渡すと、 「 俺、風呂入ってくる 」 と言い残し、 卓の上の食べ終わった茶碗と汁椀を流しに置くとそのままスタスタと風呂場に行ってしまった。 早瀬は最後に僅かに残ったご飯をかき込むと、リョウのスマフォの画面をスクロールしながら辿る。 番組の公式アカウントのTwitterサイトに、 番組プロデューサーに質問大募集という書き込みがある。 早瀬はしばらく逡巡したが、 思い切って、 そこにツイートを書いた。 『 本日⚪︎日、放送のあったスカイツリーの見える商店街のことをお聞きしたいのですが、あそこは何という商店街でしょうかと 』 こんな易い子どもじみた質問にも答えが来るのかと半信半疑だったが、 ミントに会いたい、あの場所を知りたいという気持ちは、素直に行動を起こさせる。 早瀬にはめちゃくちゃ珍しいことだった。 続く
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