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「じゃあさ。反対に聞くけど。その光さんが他の男性と結婚してもあんたは平気なの」
「そ、それは」
「あのね。もしかしてその光さんとずっと仕事仲間でいたい!って思っているかもしれないけど、それ無理だから」
雷人が結婚したら光は一緒に電気の仕事をしなくなるだろう、と元嫁はビールを煽った。
「マジで?」
「当たり前でしょう?雷人の奥さんに気を遣ってさ」
「いや?それは考えたことなかった……」
元妻の鋭い指摘に、雷人は目の前が真っ暗になっていった。
「しかもさ。バツイチだから、相手もバツイチとかって、それはあまりにも失礼でしょう」
「……」
「響にしたって。自分がいるせいで雷人が光さんを諦めたんじゃないかって思っているんじゃないの」
「マジで?」
元妻はここでビールのおかわりをした。
「私の時もそうだよね。デキ婚でさ。雷人は私と結婚してくれたんだよね」
「……」
若気の至りで交際間も無く妊娠してしまった彼女を雷人は責任を取って結婚した経緯があった。
「本当は私達、結婚は早かったよね?でも雷人は赤ちゃんのために大学を辞めて私と結婚してくれて、今はそれが優しさだって私は感謝しているんだ」
「……それだけじゃないぞ。お前と一緒で俺も楽しかったし」
「ありがとう。でもさ。お互いさ、本当の幸せを探そうよ」
若く結婚した妻にはやりたことがあり、その思いがどうしても捨てきれず家庭に収まることができず、さらに他に好きな男性ができてしまった。これを雷人は受け入れ、彼女と離婚したのだった。
こんな元妻の助言を胸に彼はカミナリ電気に帰ってきた。
「ただいま。なあ、父さん……」
「なんだ」
雷人は車を売ることにしたので、父の車を貸してくれるか尋ねてきた。
「いいが、どうしたんだ」
「俺さ。車を売ったお金で慰謝料を全額払いたいんだ」
元妻への慰謝料は分割で払っていたが、雷人はこれを精算したいと話した。これを聞いた母は何があったのか聞いてきた。
「……俺さ。光にプロポーズしたいんだ。でも。それは決着つけてからだと思って」
「いいぞ。父さんの車は夜には使わないから」
すると冴子がお金がいくら必要なのか尋ねてきた。
「そうかい。じゃあ、お前は車はそのまま乗ってなさい。お金は私が出すよ」
「「母さん?」」
「いいんだよ」
雷人の嫁に関しては自分も至らず、仲良くできなかった事を後悔していると冴子は涙声で話した。
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