34 最終話 【上村】

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「そんな事言われても、上司が部下に手を出す訳にはいかんだろう」 「じゃあ、香港に行って直接の上司じゃなくなったから手をだしてくれたの?」 「まあ、そういう事になる」  美月が笑った。 「課長、手を出して頂きありがとうございます」  美月と顔を見合せて笑った。  美月と結婚して笑う事が増えた。 「課長にもう一つご報告があります」 「改まって何だい?」 「赤ちゃんが来てくれました」 「え」  美月が嬉しそうに頬を赤くした。 「美月、本当に?」 「出張から帰って来たら言おうかと思ったけど、今日隼人君に言われちゃったし」 「そういう事はすぐ言いなさい。台所仕事は僕がやるから、家事も全部僕がやる」 「大丈夫よ。悪阻とかまだないから」 「でも、安定期に入るまでは安静にしないと」 「もう、幸一さんは過保護なんだから」 「そうだ。出張中は美月のお母さんに来てもらおう」 「一人で大丈夫だって。無理しないから」 「絶対だぞ。すぐに美月は無理するから心配だよ」 「心配性なんだから」  美月が可笑しそうに笑った。  赤ちゃんか……。  きっと美月に似て可愛いんだろうな。 「幸一さん、ありがとう。私、幸せだよ」  目が合うと美月が微笑んだ。  こんなに幸せそうな美月の顔が見れるとは思ってもみなかった。  ウェディングドレスを着た美月も幸せそうだったけど、今もとっても輝いてる。  良かった、幸せに出来て。  それにしても、53才、いや、54才でパパか。頑張らないとな。    終わり
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