3 三年前の居酒屋【上村】

4/9
前へ
/245ページ
次へ
「そう、アレです」 「課長が炊いたの?」 「うん、そういうものだって聞いたから。でも、全然食べてくれなくて。むしろ怒られました」 「当たり前ですよ。男の人に生理の事言われるのって恥ずかしいんですよ。お父さんになんか死んでも祝ってもらいたくありませんから」 「ママ友にも言われましたよ」 「課長、ママ友いるの?」 「PTAの役員を子どもの人数分やりましたからね。自然とお友達もできました」 「ちゃんと子育てしてたんですね」 「そう、だから出世なんてしないと思ってました。それが、急に本社勤務になって、長野から単身赴任です。まあ、子供たちはもう大きいからいいんですけど」 「いくつですか?」 「24才と、20才」 「私とそんなに変わらないんですね」 「そうですね」 「じゃあ、私は娘みたい?」  潤んだ瞳で一瀬君が見つめてくる。その表情が可愛らしくて魅力的で困る。このままでは危ない。上司としての立場を忘れてはいけない。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2644人が本棚に入れています
本棚に追加