26 石上【美月】

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 木曜日。石上はいなかった。  とにかく仕事に集中した。いつもの三倍の仕事をこなして、  間宮が驚いていた。 「先輩!待って下さい!」  就業時刻になり、帰ろうとしたら間宮が追いかけて来た。 「今日、すごい勢いで仕事してましたよね」 「残業したくなかったの。旅行代理店に行きたかったから」 「旅行?どちらに?」 「……香港」  間宮が目を丸くした。 「また課長に会いに行くんですか?」 「呆れるでしょ。自分でも呆れてる。だけど今のままじゃダメなの。もう一度課長に会って気持ちをぶつけて来たいの。じゃないと、諦められない」 「課長を諦める為に会いに行くんですか?」 「そうね。そうかもしれない」 「いいか、悪いかわかりませんが、頑張って下さい」 「ありがとう」  石上にプロポーズされて思った。  やっぱり私は課長が好きなんだって。  課長に好きな人がいても好きなんだって。  この気持ちをちゃんと伝えたい。  だから、会いに行く。 
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