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土曜日は帰国して、長野に行った。
葵はまだ大学病院に入院していた。
病室に行くと、先週よりも顔色のよくなった葵が瞬きしてこっちを見た。
「お父さん!また来たの?」
ベッドの側に座ると葵が呆れたように言った。
葵はベッドの上に座って、本を読んでいた。
「毎週香港から戻って来なくてもいいのに」
「酷い言い草だな。7時間かけてやって来たのに」
「もう、子離れできないんだから」
葵が笑った。
先週よりもしっかりした声だった。
「体調はどうだ?」
「いいよ。来週、退院できそう」
ほっとした。
「心配かけちゃって、ごめんね」
葵がすまなそうな顔をした。
「子どもの心配するのが親の仕事だからいいんだよ」
「お父さんさ」と言って、葵がじっとこっちを見た。
目が合った瞬間、照れ臭くなった。
「何だよ」
「なんか感じが変わったなと思って。香港で暮らしてるからかな。いや、違うな」
考えるように葵が腕を組んだ。
「好きな人できた?」
「え」
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