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「お父さん、目が泳いだよ」
葵がクスクス笑った。
「親をからかうな」
「からかってないよ。だってそんな気がしたんだもん。ねえ、香港に恋人でもいるの?」
「いないよ。いる訳ないだろ」
脇の下に冷や汗をかいた。
内心は物凄く狼狽えていた。
「じゃあ、片思いしてるの?」
「いい年してそんな訳ないだろ」
「お父さんさ、昔から嘘つく時、耳が赤くなるんだよね」
思わず耳を触った。
葵がそれを見て笑った。
「ひっかけたな」
「さあ、白状しなさい」
「娘にする話じゃない」
「娘だから聞きたいんじゃない」
葵が好奇心に満ちたキラキラした目を向けてくる。
「……わかった」
そう答えたのは半分ぐらいは聞いてもらいたかったのかもしれない。
悶々とした想いを抱えて、正直苦しくもあった。
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