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「え!19才年下の部下に言い寄られたの?」
一瀬君の事を話すと葵が目を丸くした。
「それでお父さんは?」
「もちろん断った。ありえんだろ」
「でも、その人の事がちょっとずつ気になってんじゃないの?」
一瀬君の笑顔が浮かんだ。
香港に看病に来てくれたり、街を一緒に歩いたりした。
一瀬君といると自然と笑っていた。
先週も、皇居と天ぷら屋に行って楽しかった。
その事を話すと、葵は真剣な表情で聞いてくれた。
「会社の人に会ってたって、その人だったんだ」
「すまない。葵が大変な時に。いい気しないよな」
「先週聞いてたらね。だけど、いいんじゃない」
あっけらかんとした葵の反応に驚いた。
「いいって何だよ」
「お父さん、その人の事、本当はすごく好きなんでしょ?だって、彼女の話する時ものすごく嬉しそうだよ」
葵が微笑んだ。
「好きかどうかはよくわからない」
「じゃあさ、夜、寝る前に思い浮かべる人って誰?」
一瀬君の事が浮かんだ。
ハッとした。
ゆり子じゃなくて、一瀬君が浮かぶなんて。
「……年が違い過ぎる」
「お母さんとだって違ってたじゃない。10才年上で、しかも連れ子のいるお母さんと大反対されたまま結婚したんでしょ?19才の差なんて大した事ないって」
連れ子……。
「葵、お前……」
今まで、葵に血のつながりがない事をハッキリ口にした事はなかった。
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