27 本当の気持ち【上村】

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「血のつながりがない私を娘にしてくれてありがとう。ずっと言いたかったの」  葵が恥ずかしそうに笑った。 「……知ってたのか」 「私、お父さんに会った日の事、ちゃんと覚えてるよ。頭なでなでしてくれて、『葵ちゃん、友だちになってくれる?』って言ってくれたよね」  初めて葵に会ったのは葵が二才の時だった。  ゆり子に連れられて、不安そうにこっちを見てた。 「あんな昔の事、覚えてたんだ」 「記憶力いいでしょ」 「良すぎる」  ずっとわかってて、葵は一緒にいてくれたんだ。  そう思ったら、ありがたくて、ありがたくて……。  じわりと目頭が熱くなった。 「お父さん、なんで泣いてるの?」 「泣いてない」 「もうしょうがないわね、はい」  葵からティッシュを渡され、それで涙を拭った。 「お父さんて涙もろいんだよね。結婚式もバージンロード歩く練習の時からいきなり泣いてたよね」 「泣いてない」 「泣いてたよ」 「泣いてない」 「泣いてた」  葵がコロコロと明るい声で笑った。 「お父さん、素直になった方がいいよ。好きな人に逃げられちゃうよ」  似たような事を間宮君にも言われた。 「何言ってんだ。お父さんはもう49だぞ」 「年なんて関係ないよ。それを一番知ってるでしょ?」 「生意気な事を言うようになったな」  葵と顔を見合わせて笑った。  
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