34 最終話 【上村】

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 夕方、隼人を葵の家に送って行った。  美月と結婚してから長野で暮らしてる。美月がそうしたいと言ってくれた。職場も希望を聞いてもらい、美月と二人で長野支社に異動になった。  土日は時々、隼人を預かってる。  隼人と遊ぶのは楽しいが今日はハリキリ過ぎて少し疲れた。 「おかえりなさい」  帰って来るとダイニングから美月の声がした。  いい匂いもする。今夜はカレーだな。 「やっぱりカレーだ」  ダイニングテーブルの上にサラダとコンソメスープとカレーが並んだ。 「幸一さんが食べたいって言ったから」 「リクエストに答えてくれたんだ」  美月と向かい合って座る。 「いただきます」  美月のカレーが好きだった。  市販のルーを使ってるけど、ルーを炒めるという一手間をかけてくれて、美味しい。  圧力鍋で作るので肉も柔らかい。暮らしてみてわかったけど、美月は実は僕より料理が上手いし、こっている。  美月に勝てるのはきんぴらごぼうの味付けぐらいだ。 「本当に美味しそうに食べるね」  美月が言った。 「本当に美味しいんだよ。明日から出張行きたくないなー」 「課長さんがそんな事言っていいの?」 「もう美月と離れたくないんだよ。香港と日本で1年も離れてたから」 「あの時は大変だったね。でも、香港と日本じゃなきゃ、幸一さん振り向いてくれなかったんじゃない?」 「そんな事ないよ」 「ある。だって幸一さんと同じ課だった時は何も進展しなかったもん。がんばって飲み会とか幸一さんの隣座ったり、酔ったふりして送ってもらったりしたのに。幸一さん全然襲ってくれなかった」
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